マツダスカイアクティブとは?エンジンの開発で燃焼の美しさを研究したマツダの英断

マツダこそ本物の車を作ろうとしているのではなかろうか?

ふと私の頭のなかにこんな思考が駆け巡りました。近年マツダの車が見直された理由の一つとして、スカイアクティブテクノロジーがあります。これはガソリンエンジンの持つポテンシャルを限界まで引き上げ、従来の車作りでは成し得なかった燃焼効率を実現させようというプロジェクトです。実際、スカイアクティブテクノロジーによってマツダ車の性能は見違えるように良くなり、全体のスペックが底上げされました。

今回は、そんなマツダを立ち上がらせ、世界からのマツダへのイメージを根底から覆したスカイアクティブテクノロジーに迫ります。


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マツダの歴史とスカイアクティブが生まれた背景

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スカイアクティブ技術はエンジン車の性能を底上げする技術です。そんな素晴らしい技術を生み出したマツダというメーカーは、一体どんなビジョンを持っていたのでしょうか。まずはスカイアクティブが誕生したキッカケを追ってみましょう。

元々マツダは広島でコルクを生産する会社として創業し、3輪トラックなどを生産しつつ少しずつ事業を拡大していきました。その後戦争に突入。原爆被災時も戦火を免れた本社施設を行政機関である広島県に貸し、日本の戦後の復興を支えた重要な企業の一つです。

そもそもマツダは技術屋です。今でこそ世界に名だたる日本を代表する車メーカーですが、他社がやらないような独創的な技術開発に勤しむことが得意なメーカーです。「技術は永遠に革新である」とはマツダ3代目社長の松田恒次氏の言葉です。現在では量産モデル世界唯一の技術といってもいいロータリーエンジン技術の存在など、特異な技術が光るメーカーといえるでしょう。

バブル期などは少々判断を誤り国内販売チャンネルを無謀にも拡大しすぎたおかげで大きく販売数を落としたりもしましたが、今は車一台一台を大切に作って限られた人だけに売る戦略を採っています。そうした姿勢が「クルマをゼロから見直す」という挑戦につながり、19世紀末カール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーが生み出した世界初のガソリンエンジン車の登場から100年以上も経った今、マツダは車の原点に帰る事になったのです。それがスカイアクティブテクノロジーです。

エンジンの燃焼の美しさを研究したマツダ

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スカイアクティブの内容はエンジン、トランスミッション、プラットフォームというクルマを司る3代柱を徹底的に見直すというもので、他のメーカーがハイブリッドや電気自動車へと新しいものへシフトチェンジする中、一人マツダだけは今車メーカーに残された課題を疎かにせず、まずはそちらを磨き抜くという戦術に出ました。特に動力源であるエンジンに関する研究では、エンジン内部で起きている現象を丁寧に分析していきました。ロータリーエンジンで人一倍圧縮比問題や吸気排気問題に苦しんできたマツダには独自の技術的蓄積があり、それがより高圧縮で高燃費という高効率なレシプロエンジン技術へと形を変えていきました

その時の技術的課題の一つとして、「エンジンピストン内部の爆発燃焼の美しさ」というものがありました。これは従来から欧州メーカーなどが真剣に取り組んできた課題でしたが、国内メーカーからはそこまで重要視されるような課題ではありませんでした。しかしマツダはここに着目。少なくとも2008年よりも前からこうした活動がスタートしており、新技術の目標としてガソリンエンジンで当時のディーゼル並みの、ディーゼルエンジンでハイブリッドカー並の燃費を実現させながらパワーや環境性能などのエンジンパフォーマンスも向上させるというものでした。

エンジンのパフォーマンスを排気量を上げずに実現させるためのポピュラーなものといえばターボですよね。ターボはタービンを排気の圧力を使って回すことでピストン内部の圧縮比を上げてパワーを上げるというものです。でもマツダはターボなどの過給器には頼らずに純粋に上でご説明したパフォーマンスをエンジンの素性の改良だけで実現させようと考えていました。

 

マツダの研究機関によると、BMWなどの一般的にエンジンが良いとされるメーカーの作るエンジンは、燃焼が美しいのだそうです。美しい燃焼とは、プラグ着火後即座にピストン内の燃焼圧が高まってなおかつ圧縮比も高い燃焼のことを指すようです。シュボッと点火され即座にピークパワーを迎える美しい燃焼は、それがそのまま良好なエンジンパワーや高レスポンス性に繋がるのです。

でもこんなことを真面目に考え本当に実行に移そうとしている国産メーカーは皆無でした。なぜならエンジン設計を1からやり直さないといけないからで、それはエンジンブロックの加工製造ラインから作り直すということであり、数百億円もの会社が傾きかねないほどのコストが新たに掛かるからです。お金と手間がかかって仕方のないことをやりたがらないのは民間経営の会社としては普通のことといえるでしょう。それに車メーカーというのは基本的に大企業ですから無謀すぎて危ない橋は渡らないほうが身のためです。しかしマツダはそれを実行したのです。

マツダは他のメーカーがハイブリッド主義へと傾斜する中、主力の4気筒ガソリンエンジン及びディーゼルエンジンをブロックから再設計するという英断を下しました。その結果今のマツダのスカイアクティブ技術が生まれることとなり、マツダ車全体の価値を上げる切り札となったのです。

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マツダが欧州メーカーと考えが似ている理由

なぜマツダだけが他の車メーカーと違う道を選択したのでしょうか。それはマツダというメーカーの欧州販売比率が昔から高かったからです。現に欧州でのマツダ車の販売台数は世界シェアで圧倒的に差があるトヨタの1/4ほどもあります。また長い間フォード傘下だったマツダは欧州フォードから開発責任者が送り込まれてきたこともあって、まるで欧州メーカーのような車作りに変わっていったのです。

そんなマツダからしたら、年々厳しくなる欧州の排ガス規制やCO2規制に対応するためにエンジンを基礎から再設計するという判断は企業体として合理的判断だったというわけです。確かにヨーロッパでは日本ほどハイブリッド車需要やハイブリッド開発も活発ではないかわりに運転好きが多いですし、トランスミッションもマニュアル人気が高くデザインの優れた車が売れますから、エンジンの能力だけで勝負をかけ車が持つ本来の魅力を引き出すことに注力しようとしたマツダの姿勢は多くのクルマ好きに刺さるものがあったと思います。

そんな活動は確かな功績を残しており、例のフォルックスワーゲン排ガス不正問題後に実施された国土交通省による国産ディーゼル車の排ガス抜き打ち調査では、トヨタ・日産・三菱のディーゼル車が走行時に軒並み排ガス規制の基準値を大きく上回るNOxを排出していたのに対し、マツダのディーゼル車だけは基準値を下回りました。

下の画像は東京新聞に掲載されたものです。

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出展:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201603/CK2016030402000125.html

この調査で基準値を10倍以上もオーバーしてしまった国産車もありますが違反ではありません。なぜならVWのように不正ソフトを使っているわけではありませんし、そもそも国内の排ガス規制には走行時の基準が無いためどの国産車も違反ではないというわけです。しかし、本当に環境のことを考え、未来のために車にできることを愚直に実行しているのはどのメーカーか一目瞭然なのではないのでしょうか。

実は実燃費のよろしくないハイブリッドカーや名前だけのエコカーだけがちやほやされる中、マツダだけは本物のクルマが好きな人達のために本物のクルマを作ろうとしたのではないでしょうか。「エコ」という響きだけが先行し、メーカーも消費者も本来の目的を見失いかけているご時世ですが、車リテラシーの高い人達にとってこうした誠実な車メーカーが国内に存在することは大きな喜びと言えるでしょう。

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スカイアクティブが搭載される車達

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現在スカイアクティブが搭載されるのは8車種です。

  1. CX-9(海外販売のみ)
  2. CX-5
  3. CX-4(中国販売)
  4. CX-3
  5. アテンザ
  6. アクセラ
  7. デミオ
  8. ロードスター

こうしてみるとマツダ主力車種にはほぼ搭載されていることが分かります。しかし知らない間にマツダからミニバンというものが消えていました。MPVなんか人気あったのですが、やはりここも欧州メーカーに沿った無駄のないラインナップとなったようです。普段一人でミニバンを運転し空気を運ぶことが大好きな国民は世界広しといえど日本ぐらいのものです。
2016ミニバン大好き日本人による人気ランキング!なぜこんなに人気なのか?

マツダ次世代エンジンHCCIの話

マツダが新技術であるHCCIエンジンを2018年に投入するようです。これは従来のものより3割ほど燃費が向上したエンジンだそうで、なんとガソリンエンジンでありながらディーゼルエンジンのようにプラグなしで自然発火することが可能なエンジンのようです。

スカイアクティブ技術ですでに限界近くまで高められたマツダエンジンのピストン内部の圧縮比ですが、爆発の際の燃焼の美しさをマツダが研究していたことは先に述べました。そしてここからさらに美しい燃焼を起こすためにプラグレスの自然発火エンジンが意味を持つことになります。

自然発火であれば燃焼室内の混合気(空気とガソリンが均等に混ざった気体)を同時に綺麗に燃やすことが可能になるため、さらなる高効率エンジンを作り出すことができるのです。これはある意味「究極のレシプロガソリンエンジン」と呼ぶことができるのではないでしょうか。もちろんこの実現には恐ろしい量の技術的課題があるのですが、マツダは何かを掴んでいるようです。次世代エンジンを搭載したマツダ車のドライブフィールは一体どんなものになるのでしょうか。今から本当に楽しみですね。

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マツダ車が切り開くファンモビリティーの未来

いかがでしたか?今回ご紹介したマツダの取り組みは何年も前から行われてきたことです。

マツダはスカイアクティブにはじまるガソリン・ディーゼルエンジンだけでなく、燃料電池技術やEV、そして水素ロータリーエンジン技術に関しても研究を進めています。しかしそのような技術面だけが今のマツダを支えているわけではありません。今のマツダを勢い付かせているもの…それは「いいクルマ文化」を大切にするという企業理念です。

なぜハイブリッドカーは日本だけしか売れないのか?なぜ日本ではモータースポーツが活発ではないのか?なぜ日本では車が売れなくなっているのか?これらの問題には全てある共通項があります。それが「車の白物家電化」です。

現代の日本人にとって、白物家電というものは生活必需品でこそありますが、人々の人生を彩る文化的側面などを持ち合わせているものではなく、興味の対象ですらありません。なぜなら家電などあって当たり前のものだし、どこの国製だろうがそこそこ満足できるレベルの製品で溢れているので、価格.comで一番安くて良い品が手に入ればそれでよしとされるからです。

 

今日本の車の世界に起きていることが正にこれです。そう、「車なんてどーでもいいからとにかく金の掛からないのをくれ」という先行き不安で身動きの取れなくなったユーザー相手に商売の手を広げすぎたことで、車メーカーが自らの首を締めることになっているのです。実は環境面でもお財布面でも大して役に立っていないハイブリッド車が日本だけで多く売れるのも、人生を本気で楽しむことを放棄し物事の本質に向き合わない人たちが多いからであるといえます。

どんなことでも物事の本質に向き合うにはエネルギーが必要で、そのため殆どの日本人が面倒くさがり諦めモードに入っています。しかし毎日を能動的に、感動的に、官能的に、たとえ多少の不便や苦しさがあろうとも、より濃く深く楽しく生きようとするところにダンディズムが生まれ、その国の面白クルマ文化を育んでいくものだと私は思っています。残念ながら、周りばかりを気にして自分の意見も言わず、責任も押し付けてばかりの人の意見なんか聞いていても、面白いものなんて生むことはできません。

トヨタが長年行ってきたのは、こうした日本の8割以上を占める個性のない人達をターゲットにした販売戦略でした。そしてこれからもこの点は変わらないと思います。確かに車作りは日本が飯を食う最重要の手段ですから、トヨタが日本を率いる巨大メーカーとして販売数を重視するのは仕方がないことです。でもマツダのように日本発のブランドとして、「いいクルマ文化」の創造という長い先の未来までを見据えた車作りを行うメーカーも存在します。

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マツダ車が持つ魅力には、燃費や環境、安全性、ユーティリティーといったカタログで見比べることのできる項目だけではなく、デザイン面を含めた人々の豊かなライフスタイルの実現という資質が含まれています。

つまり機能的価値よりも情緒的価値を重視する考え方であり、マツダの企業ビジョンにも近いものがあるのでしょう。最新のハイブリッドカーが家電業界のようにひたすら便利で簡単で驚く機能ばかりを追いかけるトレンド思考なのに対し、マツダのスカイアクティブ技術は刀の鍛冶職人か、はたまた伝統工芸士か…その車が人に与える喜びの本質に迫る本物志向を持つ企業なんじゃないかと思わずにはいられません。

このブログは私が個人で勝手に好き放題書いているWEBページですが、いつも車をもっと面白いものに変えていきたい、自分自身の車を見る感性をもっと面白いものに磨いていきたいという思いで書いています。だからそのような考えに近いものをもつマツダの取り組みには、心底頭が下がる思いであり、一人のクルマ好きとして嬉しくなってしまいます。

 

若者の車離れと言われる今の時代でも、クルマが好きという若者は確かに存在します。いや、本当は今も昔も同じように存在して、当人たちはクルマ好きという気持ちをもっとを出したいと思っているのに、ハイブリッド車に始まるエコカーの一人勝ちという社会の風習がそれをさせないのかもしれません。
新型86マイナーチェンジ!若者のクルマ離れの理由とトヨタ幹部のズレた認識とは?
だとしたら私にできることはただ一つ。正しいことを知ってあなたのようなクルマに興味ある人達に面白さを伝えていくこと。車はもっともっと面白いものです。車はどこまでもパーソナルなものであり、男の死ぬ間際までご一緒する相棒なのです。いつも危険と隣り合わせで、人間の弱さ醜さも露骨に表現してしまうものだからこそ、男は車に乗って自分を磨きコントロールし、失敗を重ねながら学びを繰り返し続け、人生を思いきり謳歌していくことのできる唯一のアイテムだと思っています。

今、自らの車哲学を熱狂的に語ることのできる車メーカーが、国内にはいったい何社あるのでしょうか。哲学も持たないつまらない車であふれかえる国はつまらない国民であふれかえる国ですし、第一楽しくありません。そしてそこからはなんの深みも感動も生まれないでしょう。でも日本にはもっと素晴らしい魅力がたくさんあるはずです。

私自身も、つまらない人生を送らないためにも、もっともっと自分を磨いて車の持つ魅力に迫っていきたいと思います。

【特集】マツダを変えた進化の軌跡。技術、デザイン、企業ビジョンが素晴らしい

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