日産の生み出したスポーツカーの中で最大の功績がR32スカイラインGT-Rだとすると、その対極に位置すると言われる不名誉なレッテルを貼られがちなR33スカイラインGT-R。
私はR33GT-Rも好きです。でもこの車が非難される理由も理解できます。
当時迷走中の日産が生み出した失敗作と揶揄されるR33GT-Rに迫ってみます。
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Contents
R33GT-Rが失敗作と言われる3つの理由
本当は凄いクルマだったのに親が神格化されたためにダメ息子呼ばわりされたR33GT-R。
どうしてこんなことになってしまったのかを3つのポイントにまとめてみました。
R33が評価されない理由① デブになった
R32とR33を並べてみてパッと見で違いを感じるのは、何よりもその見た目のデザイン、大きさでしょう。ボリューム感といったほうが良いかもしれません。
レースで勝つことを宿命付けられ、戦闘機のような引き締まったボディーを持つ先代R32に比べて、ユーザーの意見を取り入れて快適豪華仕様に走って肥大化してしまったR33は、GT-Rファンから不遇の扱いを受けました。
また当時の日産は北米市場を睨んでいたため、欧米人に合わせた室内空間の確保を優先した結果R32型で魅せたタイトなコックピット感も崩れ、R33GT-Rはまるで豪華なセダンに乗っているかのような雰囲気になりました。
日産は、これらの変更は全てR32スカイラインGT-Rユーザーから出た意見をそのまま取り入れた結果だと言ってました。確かにR32は後部座席など狭かったのですが、そうした本質からずれたところに手を加えていく内に知らず知らずのうちに大きく重くなってしまったというのです。
GT-RはR32のようにそもそもの生まれてきた理由を忘れてしまったのですね。いたずらにマーケットやターゲットを広げたことによって生じた歪みでした。
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R33が評価されない理由② 運転がつまらなくなった
R33GT-Rは、まずコスト面での制約からシャーシをC34ローレルと共有化したことによってホイールベースのみならず車体が大型化。それに伴い車重も増加しドライブフィールも全体的に重くダルくなってしまいました。※と言われていますが、実はそんなに大きくなっていない上にレースタイムはR33のほうが上です。
絶対的な速さではR33GT-RはR32GT-Rよりも早いです。ゼロヨンだって上です。しかし運転するドライバーの感性的な部分で著しく劣っていたのです。
正確には劣っていたというよりもR32のキビキビした運動性能とは違うまったりしたドライブフィールを与えられたといったほうが良いのですが、R33GT-Rは当時のレーサーたちから酷評を受け、罵倒されました。「これはローレルだ!」と。
ただ、S14シルビアやP11プリメーラをはじめ当時の他の日産車も同じような進化?と遂げ不遇の扱いを受けているのでGT-Rだけに限った話ではないのですが。
まぁ日産の一つのトレンドだったと言えるでしょう。
ただ、当時の日産の情報発信としては「意のままに操れる」ということを「車がドライバーの期待通りに動く」ことや「期待に反した動きをしない」ことと定義しており、さらにこのR33では「クルマからドライバーへの語りかけがある」ことを新しいテーマとして取り入れました。
そうして生まれたR33は、より安全に速く走るため日産が「あらゆるシーンにおける走りと持久力の向上」を目指したものでした。
こうしたことからR33を作った時の日産のクルマ作り、そしてGT-R開発への姿勢が本物だったことがうかがい知れると思います。
R33が評価されない理由③ リミッターが多すぎた
これはデカイです。本来GT-Rというクルマは素性が凄すぎてちょいとチューンしてやれば名機RBエンジンが怒りの咆哮を上げ、簡単に1000psオーバーに到達して他のライバル車が太刀打ち出来なくなるほどのマシンポテンシャルを持ちます。
そのエンジンの限界値のみならず、R33GT-Rはシャーシ剛性や電子制御技術からくる車体の安定性は1000馬力オーバーに余裕で対応するように作られています。普通のクルマは1000馬力なんて大パワーに車体や足回りがついていきません。そしてその総合力は当然R32GT-RよりもR33GT-Rのほうが上でした。
しかし市販車には280ps自主規制というものがありました。こうなると泣く泣くたくさんのリミッターを付けないといけません。本気出せば別格のクルマなのに市販車チューンでは牙をもがれ、結果R33GT-Rはただの亀グルマというレッテルを貼られてしまったのです。
一般ユーザーは本気のGT-Rを味わうことなどできませんからね。極限の状況下までチューンされるとR32とR33の差が開くということは世界でも有名です。R33を怒らせたら怖いですよ?
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R33GT-Rは結局何なんだ?
GT-Rがレースで勝つために生まれた車とはいえ、人の感覚や好みは絶対的な数字ではないんだなということが分かります。
実際R33GT-RはニュルブリンクサーキットではなんとR32GT-Rよりも21秒も速く走りました。そして「マイナス21秒のロマン」なんてキャッチコピーまで引っさげて登場したのに…遅いと言われました・・・。orz
これは前述のとおり全体的に拡大された車体と延長されたホイールベースによる俊敏性の低下によるものだったのですが、R33GT-Rは少々過小評価され過ぎてしまった不運なモデルといえるでしょう。
本当はR32よりも運転しやすく、長時間運転の疲労も少ない。さらにチューンベースとしてのポテンシャルもR32以上でドライバーのミスもカバーしてくれる特性もあったのですが、評価には繋がりませんでした。
しかしそうはいってもR33はR33です。未だに固定ファンがいることでも有名です。R33GT-Rはある意味快適性も併せ持った特異で貴重なGT-Rといえますから、この車でないとというオーナーさんも多いのです。私は高速道路で見かけて一番嬉しい車はR33GT-Rです。なんといいますか一番ピッタリなんですよね。The・GTカーという感じが。
今から15~6年前に私の自宅の近所にホワイトのR33GT-Rオーナーさんがいました。いつもピカピカに洗車されたそのR33は圧倒的な存在感で、私は夕暮れの紅の空がR33の白いボディーやヘッドライトカバーに美しく映るのをずっと眺めていました。膨張デザインのR33はとてもグラマラスでボリューミー。当時GT-Rの大ファンだった私にとって、その近所のR33GT-Rは正に眠れる獅子。周囲の車とは違う孤高の存在でした。
だから私は未だに綺麗なR33を見ると当時の記憶を思い出し、なんともいえない懐古主義的ノスタルジックワールドに一人突入してしまいます。※R33は全然クラシックカーの域ではないのですが。
もしあなたが今R33GT-Rのオーナーさんだったら、GT-Rを大切にしてあげてくださいね。
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